| 平成18年度税制改正で、役員給与・賞与の税法上の取り扱いが大きく変わりました。今回から2回シリーズで、何がどう変わったのかを具体的にお話します。
●社長の給料が増税対象になるって本当!?
今年の3月11日(土)に、久保総合会計事務所主催で「役員報酬セミナー」を開催しました。読者の方の中には、このセミナーにご参加いただいた方もいらっしゃると思います。
このセミナーの中で、参加者が最も熱心に聞いておられ、また終了後の質問が一番多かったのが、この「社長の給料が増税対象になる!?」という改正点でした。
誤解のないように最初にお話しますが、全ての会社の社長さんの給料が増税対象になるわけではありません。ある一定の同族会社を主宰する役員の給料について、その一部を費用にできなくなる、ということなのです。
●一定の同族会社ってどんな会社?
次の1.2.の要件を同時に満たす同族会社(特殊支配同族会社といいます)が該当します。
1.同族会社の業務を主催する役員及び同族関係者等が、発行済株式総数の90%以上を有する。
2.同族会社の業務を主催する役員及び同族関係者等が、常務に従事する役員の過半数を占める場合等。
ちょっと難しい言い回しなので、ところどころ解説しますと、まず「業務を主催する役員」とは、基本的には経営権を持った中心的な役員、つまり社長さんと理解してください。
また「常務に従事する役員」とは、肩書きや名称としての「常務」ではなく、役員という肩書きを持つ人のうち、きちっと役員としての仕事をしている人と理解してください。つまり、実態のない名目だけの役員は含まれません。
例えば・・・・
社長、奥さんが役員、身内以外の役員が一人、つまり役員3名という会社で、社長と奥さんが発行済株式の90%以上を保有している場合、上記1.の要件を満たし、かつ、上記2.の要件も満たす(2/3は過半数)ため、この特殊支配同族会社に該当します。
●社長の給料のうち、何が費用にならないの?
では、上記の特殊支配同族会社に該当した場合、何が費用にならなくなるのでしょうか。
それは、社長さん個人の所得を計算する際に、収入金額から引いてもらえる「給与所得控除額」というものなのです。個人の給与所得を計算する場合、1年間の給与収入金額から、この給与所得控除額を引いて、税金の計算を行います。具体的な給与所得控除額は以下のとおりです。
【給与の収入金額】 【給与所得控除額】
180万円以下 → 給与の収入金額×40%(最低65万円)
180万円超 360万円以下 → 給与の収入金額×30%+18万円
360万円超 660万円以下 → 給与の収入金額×20%+54万円
660万円超 1000万円以下 → 給与の収入金額×10%+120万円
1000万円超 → 給与の収入金額×5%+170万円
今までは、法人については、役員給与は余程過大な金額でない限り、その全額を会社の費用にできましたし、また、社長さん個人の所得についても、上記の給与所得控除額を給与収入から差し引くことが出来たのです。
それが、今回の改正で、「個人で給与所得控除ができるのだから法人では役員給与の全額を費用にするのではなく、給与所得控除額は費用にできないようにしよう」という、法人課税と所得課税がゴッチャになった制度となってしまいました。
例えば・・・・
年間の役員給与が1,000万円の方では220万円、2,000万円の方では270万円(上記の計算式に当てはめてみてください。)が法人の費用に出来なくなることになり、法人税等の税率を仮に40%とした場合、それぞれ88万円、108万円の法人税負担が増える、という結果となります。
ものすごい増税ですよね!!
●適用除外措置もある!
この「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」制度については、適用除外措置というのがあります。つまり、一定の要件を満たせば、今までどおり、役員給与の全額を費用に計上できるのです。
では、どんな要件なのでしょうか。
1.前3事業年度における基準所得金額が800万円以下である場合。
2.前3事業年度における基準所得金額が800万円超3,000万円以下であり、かつ、その基準所得金額に占める「基準期間の業務主催役員の給与の平均額」の割合が50%以下である場合。
何のことだか分からなくなってきましたねぇ〜。具体例で見てみましょう。
・事業年度 平成17年1月1日〜平成17年12月31日
・直前3年以内に開始する各事業年度における基準所得金額
平成16年12月期の所得・・・・700万円
平成15年12月期の所得・・・・500万円
平成14年12月期の所得・・・・300万円
合計 1,500万円 ÷ 3 = 500万円(a)
・業務を主催する役員給与の平均額・・・・・・・・1,000万円(b)
(b)/(a)+(b) = 0.66666>50%・・・・・適用あり、となります。
上記の例にある、基準所得金額の求め方は、単にその事業年度の所得金額を引っ張ってくるのではなく、非常に複雑な計算が必要になってきます。
ご自分の会社が、特殊支配同族会社に該当するか、また、適用除外の対象になるのか、については、税理士等の専門家に診断していただくのがいいかと思います。
…………………
財務省の試算では、この改正による課税対象企業は「法人企業全体の2%、5万社程度」になるとの予測ですが、何となく財務省の試算をはるかに超える多くの中小企業に税負担を強いることになるような気がします。
それに、せっかく会社法(平成18年5月1日施行)で、取締役1人による株式会社の設立が容易になったというのに、これでは「法人成り」のメリットがなくなり、起業家の意欲を削ぐことにも成りかねないように思いますが・・・・・。
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